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内子町は森林の面積が77%で、基幹産業が農業という典型的な中山間地域です。山間部では放置林や耕作放棄地、農業の後継者不足などの課題もあります。そのような中、町を支えているのは周辺の村々だということに気付き、農村集落の活性化に視点が移されました。自然や環境、農村景観など、住民自らが地域資源を発掘し、さらに磨きをかけて次の世代に引き渡す。それが村並み保存です。
その最初の舞台となったのが石畳地区です。昭和62年、地域の若手住民数人によって「石畳を思う会」が結成されました。最初の大きな取り組みは平成元年の水車の復元です。彼らはポケットマネーを出資し、自ら汗をかき、水車を建設しました。それを契機に、数年後には「水車まつり」が開かれるようになり、毎年2,000人もの人がこの谷間の村に集まるようになりました。
また平成6年には地域に残る築80年の農家を移築して町営「石畳の宿」をつくりました。町営ですが運営は地元石畳の女性たちに任せ、食材は自分たちの畑や山で採れたもの。多い年には年間1,000人の宿泊者があり、農村景観と季節感豊かな食事、そして住民の人柄に惹かれてくるリピーターも多くいます。このほか石畳地区では河川の整備や照葉樹の植林、ホタルの復活などにも取り組み、近年ではそば処として企業組合も立ち上げ、継続と挑戦のトップランナーとして評価されています。
平成27年には石畳自治会の「美の里を未来へ 石畳地区・村並み保存活動」がユネスコのプロジェクト未来遺産に選ばれたほか、令和2年には、住民有志が株式会社石畳つなぐプロジェクトが立ち上げ、樹上完熟栗のブランド化を中心に、地域経済の活性化に取り組んでいます。