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移住者インタビュー(西側 亜希子さん)
「自分の店を持つ」夢を叶える 西側 亜希子さん(平成27年・神奈川県から移住)

県内各地でイベント出店をしていたドーナツ「おいとはん」が、2025年6月に「つぶらかドーナツ」として待望の固定店舗をオープン。店主の西側 亜希子さんは横浜市出身でありながらも、紆余曲折を経て内子町へ移住。マルシェ・イベント出店からドーナツ販売を始め、昔から憧れていた「自分の店を持つ」夢を叶えました。
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○「丘の上の日曜市」で見た、理想の田舎暮らしの景色に憧れて
元々の出身は神奈川県横浜市です。実はここに来るまで内子町とはまったく縁のない人生を送ってきました。ですが約10年前に夫が「実家の愛媛に帰りたい」と言い始めたことがきっかけで、家族で愛媛への移住を検討し始めたんです。
夫の生まれ故郷の松山は今住んでいる都心部の生活とそこまで変わらないな、と思って。どうせなら環境が今までとまったく違う場所に住みたいと思っていた中で、たまたまテレビで紹介されていた内子町がふと目に入ったんです。興味を持って一度足を運んでみたら、その日がちょうど菜月自然農園さんで毎月行われている「丘の上の日曜市」の日で。そのマルシェの光景が私の思い描く理想の“田舎暮らし”のイメージにとてもぴったりで、それが内子町に最初に惹かれた時の一番の思い出かもしれません。ものすごくのどかで緑に囲まれた場所で、みんな自然の中で生き生きした表情で……。都会で暮らしてきた私にとってカルチャーショックというか、ある意味とても大きな衝撃を受けた景色でもありました。
いろいろお話を聞いてみると私のように他所から移住してきた方も多いと知って、「近い境遇の方もたくさん居そうだな」と安心感を覚えた点も、より移住に前向きになったポイントです。そのまま本格的な移住相談を始めてすぐ「空き家があるよ」とお声もかけてもらえて……本当にトントン拍子に内子に移り住んで今に至ります。
子育ての面でも、内子へ移住して良かったな、と思いますね。現在中学1年生の娘が1人いるんですが、移住した時はまだ3歳。うちは一人っ子で寂しい思いをさせてしまうかな、と思っていたんですが、同じ幼稚園・小学校の子たちと兄弟姉妹のように育ってきました。田舎ならではのいいアットホームさ・身内感の中で、地域みんなで子どもたちを見守るコミュニティが形成されているような感覚ですね。学校や園の行事でも、本物の竹を使ってそうめん流しをしたり、アユの放流やバードウォッチングを体験したり…。私自身も体験したことのないような五感で自然を感じる機会にたくさん恵まれていて、ものすごく豊かな幼少期を過ごせているように思います。同じように子育てに奮闘するママさんも移住してきた方が結構多くて、その点でも安心感や連帯感がありますね。

○ゆったり一人になれる空間と“日常のおやつ”としての素朴なドーナツを
移住のきっかけが「丘の上の日曜市」だったこともあって、「出店側で参加してみない?」と誘われた時も断る理由はまったくなかったです。移住した年にすぐ「おいとはん」のイベント出店を始めて、最初はパンや焼き菓子なども売っていたんですが、次第に一番評判のよかったドーナツがメイン商品となっていきました。
イベント出店の時代から店舗販売になった今も、ドーナツへのこだわりはそのまま変わっていません。使う食材は国産が主で、地元愛媛の食材も積極的に使っています。牛乳ではなく豆乳を使うことで、生地の舌触りや風味が優しく素朴な味わいに。特別な日の映えるスイーツではなく、ありふれた“日常のおやつ”としてのドーナツを提供したいんです。
このままイベント出店を続ける道もあったんですが、実は若い頃から「自分のお店を持ちたい」という夢を密かに持ち続けていました。あくまでそれは夢でしかなかったんですが、徐々に母が亡くなった年齢に自分が近づいてきた今、「やっぱり自分の人生を満足いくものにしたい」と思い始めて。同時に母親として、娘に「大人が夢を叶える姿を見せたい」とも考えるようになったんです。そんな思いが、お店作りのきっかけのひとつでもありました。
具体的に店舗オープンへと動き出したのは2024年1月です。お店を始めたいとあちこちで口に出していたら、いろんな方が情報を持って来てくださったり、協力するよ!と言ってくださったりして。おかげさまで物件もスムーズに決まり、独立・創業のための補助金も活用しつつ、2025年6月に無事お店をオープンすることができました。本当はもう少し早い開店予定だったんですが、開業者向けの補助金の枠がいっぱいで……。ですが裏を返せば、それだけ多くの人が内子町で独立に挑戦しているんですね。
昔からお店を持つことが人生の中でのひとつの夢だったので、目標を叶えた今、すでにゴールを迎えたような気持ちになっていますが……本当はここからがスタートなんですよね(笑)。お店には「おいとはん」時代からよく足を運んでくれる方や、中には「噂を聞いて初めてドーナツを買いに来ました」と言ってくださる方もいます。今はテイクアウト利用の方が大半ですが、お店にはイートインスペースも設置しました。たまにはカフェやお店で、誰にも邪魔されずぼーっと1人の時間を過ごしたい、という時もありますよね。そんな方にはぜひ当店を“隠れ家”として使って頂き、おやつと一緒に自然の中でゆったり癒されるひと時を過ごしてもらいたいです。

2025年8月インタビュー Writer:曽我美 なつめ Edit:水本 誠時(内子町移住コーディネーター)






